ご入学おめでとうございます!(2024年度入学式)

2024.04.06

2024年4月6日(土)、2024年度入学式が行われました。

言語文化学部353名(編入学11名含む)、国際社会学部372名(編入学9名含む)、国際日本学部77名、大学院総合国際学研究科博士前期課程97名、博士後期課程34名、計933名の新入生が入学を許可されました。

「たふもにゅ」にて記念写真
「トビタくん」と記念写真
入学許可
学長式辞
大学歌、祝典歌合唱。歌唱は東京外国語大学アカペラサークルLINES
海外で活躍する卒業生からのメッセージ(ウクライナ?ウクルインフォルム通信?平野高志さん)
言語文化学部新入生代表挨拶(山田真珠子さん)
国際社会学部新入生代表挨拶(石井倖之介さん)
国際日本学部新入生代表挨拶(髙尾璃子さん)
在学生による迎える言葉(2023年度外語祭実行委員会委員?上條航さん)
在学生による迎える言葉(博士後期課程?洪朝陽さん)
キャンパスの桜は満開

学長式辞(学部)

新入生の皆さん、入学、おめでとうございます。

東京外国語大学は、昨年、建学150年を祝いました。今年は建学151年目に入ります。150年の歴史は、4つの時期に分かれています。一つ目は、明治の初めの時期です。欧米の文化を吸収しようとした日本にあって、本学は、日本が世界を学ぶための窓口となりました。通訳や外国書籍の翻訳者、さらに全国で外国語教育に当たる教員の育成などが行われました。フランス語教師になろうとした詩人の中原中也が本学で学んだことはよく知られています。

第二の時期は、長い戦争の時期です。日本がアジアに進出していくプロセスで、現地で活動する産業界や軍の人材の育成が本学に期待されました。この結果として、本学は、多くの戦争犠牲者を出しました。その中には、本学でロシア語を学び、満州鉄道調査部で働き、戦後シベリア抑留中に亡くなった山本幡男さんも含まれます。彼は、二宮和也主演の映画『ラーゲリより愛を込めて』のモデルになった人物です。映画の中の描写ではありますが、戦争のさなかにあっても世界の人々と対等に付き合おうとした、本学卒業生の姿が目に浮かびます。

そして第三の時期は、戦後日本の経済成長の時代です。在外公館や日本企業の海外事務所では、必ずといっていいほど、本学卒業生が活躍していました。Japanese Businessman の時代です。マンに言ってしまってもいいくらい、今よりも、本学の男子率が高かった時代でした。今は、男子も女子も、世界の職場で活躍しています。

そして、21世紀に入り、大学は、世界の新しいフェイズに対面しています。それは、グローバル化、それにより国境が希薄になり人と人がまじりあい、世界の多言語多文化化が進んでいる時代の東京外国語大学です。

ただ、この10年、20年の間にも、大きな変化が何度もありました。明るい希望が持てたときもありました。しかし、新自由主義の下、貧富の差が広がり、不満は各種のテロとして暴発する時代になりました。また、コロナ禍による傷は、世界の人々を内向きに変えた気がします。今、世界は、自国民、あるいは自分たちの集団だけの利害を振りかざすことでもてはやされる政治指導者であふれ、人間としての常識や良識が通用しにくくなっています。ロシア軍によるウクライナ侵攻がはじまってすでに2年となりました。イスラエルによるパレスチナの住民への暴力的支配はすでに70年に及びますが、その歴史のなかでも例をみないほどの暴力が、今、私たちの目の前で行われています。

そんな時代に、私たち、東京外国語大学で学ぶ私たちは、何ができるのか。そんな途方もなく大きな問いを、他人事としてではなく、自分のこととして考えるのが、私たち東京外国語大学です。それは、長い大学の歴史の4つ目の時代を生きる私たちの責務でもあります。

すべての問題は、人と人が接触し、「自分たち」とそれぞれが認識する集団が接触し、関係しあうところから、発生しています。たぶん、人間が、自分たちの言葉が通用する、生まれた土地から一歩も離れなければ、進歩もおこらない代わりに、問題も発生しないのでしょう。しかし、人は、行動し、接触し、そして争っています。

そうした中で、争いを避けながら人と人をつないでいくのは、相手の言葉を理解し、それを通じて、他者の立場や思いを受け入れることのできる「仲介者」の存在です。それは、相手を理解する想像力と共感力をもった人間です。ただ、「仲介者」には、仲をとりもつ、という役割だけが期待されているのではありません。人としての善意や良識をもって、正しい方向に導くことも求められます。

そもそも、人の言葉に耳を傾け、理解し、人と人をつないでいくには、皆さんのなかに、それをうけいれる気持ちの余白も必要です。そして、善意や良識の源となるのは、皆さん自身が身に着けた教養です。本学での学びは、そんな将来に向けた準備となるよう、計画されています。

皆さんが入学された東京外国語大学の中には、世界があります。ウクライナやガザの人々、あるいは、ミャンマーやアメリカの問題を、わが事として考える人たち、また戦争に揺れる世界全体のことを、それぞれの立場にたって考え、行動する教員や学生たちがいる大学です。東京外国語大学の特性はそこにあります。小さな大学ではありますが、皆さんが世界の人々とともにある大学の一員になられたことを、心から祝うと同時に、ともにがんばっていきたいと思います。

これから本学で学ぶ皆さんが、想像力や共感力をもって、際限なく分化?分裂し続ける世界を、何とかひとつに繋ぎ止める役割を果たしてくれることを、心から期待しています。どうか、大きな志をもち、有意義な大学生活を送ってください。

入学、おめでとうございます。

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2024年4月6日
東京外国大学長 林佳世子

学長式辞(大学院)

大学院への進学、おめでとうございます。修士課程に97人、博士課程に34人の方が進学されました。本日から皆さんは、本学、総合国際学研究科の一員となられました。

さてこれから始まる大学院という世界で、皆さんは、学生と研究者の間の扱いを受けます。授業料を払い、手続きに関し大学からあれこれ指示をされ、授業に出席して試験を受けて成績を手にします。その点では、学生です。その一方で、自分で自分の研究テーマを決めなくてはなりません。目指すところは、論文執筆です。この点では、研究者扱いです。先生は、頼りになったり、ならなかったりです。細かく進捗に関与してくれる先生もいますが、自由な時間をくださる先生もいるでしょう。きっと、皆さんそれぞれの特性を見てそうしてくれるのでしょうが、なにより自分の道は自分で切り開かざるをえないからです。それでも、先生や同じ分野の仲間と信頼関係を築き、修士なら2年後、博士なら3年後の修了に向け、大切に大切にテーマを育てあげ、研究に邁進していください。ぜひ、今日からその一歩を踏み出していただきたいと思います。執筆する論文は、皆さん自身の「分身」ともなるような、そんな存在だからです。

「分身」だというのは、論文で皆さんが問う問いというのは、きっと、皆さん自身の内側からでてきた、問わずにはいられない「問い」だと思うからです。今、こうして生きていくなかで、疑問に思うこと、どうしてだろうと思うこと、あるいは、なんでなんだ、と思うこと、正したいと思うこと、こうあってほしいと思うことは無限にあると思います。大学院で皆さんが問う問いは、こうしたものからなっています。私たち、人文社会系分野の問い、というのは、そのような、人が人として生きていくなかからでてくる問いです。一人の研究者としての皆さんの問いも、その一部なのです。

このように人文社会系の学問分野は、人が人として生きていく上で、とても重要なものです。そもそも人間とその心は、今も謎にみち、探求すべき存在です。私たちが生きている時代は、科学技術が進み、人工知能が人間の暮らしを変え、AIを搭載した兵器が勝手に人を殺すような時代になっています。しかし、生身の私たち自身は、そんなに大きくは変わっていません。戦争で死んだ家族や恋人を悼む気持ちは、たとえば、古典の世界での主人公の嘆きと、一向にかわることがないからです。

今、世界は、無数の問題を抱えています。ロシア軍によるウクライナ侵攻がはじまってすでに2年となりました。イスラエルによるパレスチナの住民への暴力的支配はすでに70年に及びますが、その歴史のなかでも例をみないほどの暴力が、今、私たちの目の前で行われています。しかし、世界はそれを止められないまま、死者数だけが増えていっています。

戦争による犠牲者が増えるのは、兵器に使われる技術の研究が進んでいるからです。技術の研究を行っている人々は、もちろんそのような結果を望んでいるわけではありません。彼らとて、できることなら、人文科学分野の研究により、歴史的な原因を明らかに、国際秩序を構築し、倫理や価値、責任の観点から問題点を明らかにし、人が人を殺すことをやめさせてほしいと願っているはずです。人文社会系の研究は、人間の未来に関わっているのです。

変わらない感情やエゴをもった人間を扱う学問分野により、技術に支配されない人間社会の可能性が議論されなくてはなりません。人間とは何なのか、人間の幸せとは何なのかは、人文社会系の研究により、明らかにされていくことでしょう。

皆さんの研究は、このように、社会とその未来につながっています。その視点、視野をもって大学院での研究に励んでいただきたいと思います。皆さんの研究が、社会につながり、社会を変えていく力となっていくものと信じています。

皆さんの大学院での生活が充実したものとなることを祈念し、入学のお祝いの言葉といたします。

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2024年4月6日
東京外国語大学長 林佳世子

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